2015年秋、1年間の在外研究でロンドンに滞在していたとき、完全なる不注意で転んで顎を骨折しました。そこから、期せずして英国医療制度の「参与観察」(参与率高め)が始まりました。
 けがしたものは仕方ない。時計の針は戻せない。ならば「ゆりかごから墓場まで」で有名なイングランドのNational Health Service(NHS)を体験してやろうじゃないか!と一度はポジティブになってみたものの、あとからあとから色々な「体験」をさせていただくことに。
 NHSはいい制度なのか否か、私の評価は乱高下。

 とりあえず治癒して経過観察となって日本に帰ってきた今も、あの体験は何だったのか、この個人的な悲喜こもごもはいったいどういう文脈に位置づくのだろうかという思いが残っています。

 リアルタイムで「なんだこれは!?」と思ったことや浮き沈みする感情をSNSで投げていたところ、「あれはおもしろい」「書き残せ」という声もいただきます。まあ確かに、わが身を犠牲にして学んだイギリスのしくみは端的におもしろかったし、救急病院で「ううう…」となりながらも患者層を観察していたくらいなので、何か残しておきたいと思います。
 ただ、研究者として書くには、やはり専門外。個人的な体験の窓から見たものをデータや分析を加えて展開させるような学術エッセイ風のものが書けたらよいのですが、通常業務に戻った今、読みやすいエッセイを目指したら永久に書けません。
 ということで、とりあえず、イギリスで体験したこと、見て考え疑問に思ったことを、日本の医療に慣れきった一個人の立場からの一体験記として書き留めておきたいと思います。裏付けやデータが見つかったことについては付記していますが、探す余裕もないものは疑問は疑問のままにしておきます。制度のオーバービューや専門的な評価は専門家が書かれているので、私は体験したことを、なるべく体験した順に、でも、気になって後から調べちゃったことを交えて書き留めたいと思います。

 ですので、「それはこういうことなんだよ」というコメント大歓迎です。(特に専門的な知見をお持ちの方や、似た/違った体験をした方、他の国の話など!)


[2016年7月29日追記]
 ここで書こうとしていることは、単なるけがの記録や治療記録ではありません。私がどこでどう驚き不安になったかを書くにあたってけがや治療の内容は大前提となるので書いていますが、イギリスの医療の仕組みのどこに驚き、どう苦労したかということを書き留め、考えようとしています。