顎下は縫うことになるけれど、まずはレントゲンを撮りましょうということで、レントゲン室に行かされた。レントゲン技師の医師や看護師とは違うマニアックな職人的な雰囲気は日本と変わらないなあと思ったが、撮った写真は後から考えればかなり原始的なものだった。
 正面と、顎の付け根を中心とした両横側の3枚。血が出ているところと、かみ合わせがおかしいということで付け根という判断なのだろうか。


 そして、おそろしいことに、レントゲン室から出た足で、レントゲンの費用を会計させられた。最後にまとめて計算してくれればいいのに、とりっぱぐれないようになのだろうか?
 レントゲン3枚で、お会計169ポンド(クレジット明細によれば31,896円)。レートが悪いときとはいえ、日本で全額自己負担で払うよりも高いのではないだろうか。
 なお、その後払った診察費は100ポンド(18,873円)だった。


 診察室に戻る途中で、在外研究仲間が来てくれたのに出会えた。前夜に明日報告に行くと言って別れた友人が、その翌朝に「けがしたので救急に来てくれませんか」と電話したのだから、本当に驚いただろうし、自分の仕事そっちのけで駆けつけてくれてありがたい限りだった。直後に連絡がつかず、メールで報告に行けない旨を伝えた報告先の先生にも、改めて連絡してもらった。
 顔見知りが来て余裕ができた私は、周りを観察し始め、ちょっと饒舌になった。すごく痛いわけでもないししゃべれているし、顎が外れたとかかしら?とちょっと楽観的になったが、診察室で医師は、「残念ながら折れてます」と告げた。

 ただ不思議なのは、私は右の顎のほうが痛いと思っているのに、顎先(「そこはjawではなくchinと言うのね、そうよね」と思って聞いていた)と左の下顎付け根が折れているということだった。最終的には両側とも折れていたので、読影のときに右と左を間違えたのか、激しく折れていたはずの右側を見落としたのか、よくわからない。レントゲン自体がなにやらものすごくぼんやりしていた。


(右側、折れてますか?―この図ではわかるわけがない)
f1-6-1 最初のレントゲン