ところで、実際に体調不良になったとき、本当のところどうすればいいのか。私が当初知っていたのは、「風邪くらいではGPは何もしてくれない」(1)ということと、「予約を待っていられない場合はウォークインがある」ということだけだった。
 その状態で、とりあえずプライベート病院に駆け込んだ結果、NHSの大病院に行けと言われて何がなんだかわからないまま、すべてがスタートすることになったのだ。


 後日図書館で無料配布していたのを見つけた高齢者向けのNHSガイドや、NHSのホームページ(Urgent and emergency care services in England  (NHS Choices))、2014年5月25日閲覧)によれば、NHSに頼る限りにおいては、以下のようになっているらしい(2)。

・ただの風邪は薬局へ。
・慢性やしつこい病気はGPへ。
・命にかかわらない急なけがや病気はWalk-inかMinor Injury Unitへ。
・命にかかわっているときは、A&E (Accident and Emergency)へ。


f2-7-1




(1)

 日本人が「NHSは使えない」というときに、「薬も出してくれなかった」という理由を耳にすることがありますが、それは君、いくらなんでも世界を知らなすぎ。風邪で医師の処方を受けるのは、世界でも少数派。世界標準は薬局で薬を買うか、せいぜい薬剤師に相談です。処方はNHSでも無料ではないので、仮に親切な医師でも「風邪のようだから薬局でこれを買ってね」と言われて帰されます。それが医療資源の効率的分配を行うゲートキーパーの仕事なのです。それがいいか悪いかは別として。
 そんなわけで、私は、1ポンドでどこでも売っている消炎鎮痛剤パラセタモールと、総合感冒薬レムシップ(レモン味の粉末ドリンク)を常備していました。引っ越し疲れか38度台が数日続いた5月の頭に、日系医療病院に行きましたが、やっぱりパラセタモールとその他の消炎剤をもらっただけで、自分でこの症状の時はこの薬という知識があれば薬局でも同じだと思いました。
 日本でもそれは同じだと思いますが、日本の場合は市販薬が安くないのが玉に傷。お金のない院生時代、大学の保健センターで薬剤実費のみで処方薬を出してもらったときを思い出しました。


f2-7-2 市販薬




(2)

 ちなみに、他にも以下のような情報が。
 ・退院後の生活がおぼつかない場合はケアラーの手配を相談できる。(家族のケア負担も査定してもらえる。)
・ 退院時や通院の際に公共交通機関が使えない場合は、ある所得以下だと送迎ボランティアに相談できる。
・家の改装などが必要な場合も相談窓口がある。
・退院書類をGPに渡して次の治療を受けることになるので、ミスがないかよく読め。
・病院を通して通訳を依頼できる。
・苦情は直接で解決しない場合は、専門窓口に行け。


 これらが無料なので、NHSってすごいという気もするものの、自分が自衛して動かないと制度を使いこなせないなあとも思いました。そして、とりあえず退院させられたあとは、GPに差し戻される可能性があるのか、とも思いました。(最後の3つの点は、後々自分に関係してきます。)