縫合を終え、一応どこがどう折れているのか、レントゲンを見ながら説明してもらった。
 プライベート病院のレントゲンではわからなかったが(それもどうかと思うが)、パノラマだと、はっきりと下の前歯の下が割れていた。ホチキス状のもので止めてしまうのだという。取り出すのではなくそのまま置き去りということで、手術は1度で済むとちょっとほっとした。
 顎の付け根は、左側はよくわからなかったが右側は付け根が内側に転んでいた。それを手術して戻さないという選択肢があることが謎だったが、もう何も考えたくなかった。


 「シアター」の空き具合で翌日の手術の時間が若干前後するかもしれないが、深夜2時(英語だと0時過ぎたらモーニングなので、朝2時と言われた)から絶食ということで、管理のためにそのまま入院となった。
 入院中は、点滴その他のたびにいちいち注射しないために、チューブ類と連結する注射針をつけたままにするということで、注射をされた。

 私の血管は青々と浮き出ている。アトピーなので今までの人生でけっこう採血されているが、血管が見つからなくて刺し直されたことなどほとんどない。だが、男性医師は、やはり不器用だった。
 左のひじの血管にずいぶん苦労して針をさしていたが、何かがおかしい。覗きこんだ女性医師が驚いた表情で一言、「オー、イッツキンキー」と言った。
 ――キンキー?注射が倒錯!??
 劇場ファンとして、見に行こうと思っていたKinky Bootsというドラグクイーン用ブーツを題材としたミュージカルが浮かんで理解できなかったが、どうやら針が曲がったらしい(kinky=ゆがんだ、曲がった、(俗)倒錯した)。
 ――エエエエエ。
 血管が細いと言い訳されたが、百歩ゆずって細いとしても、日本で過去に左ひじで失敗されたことは、ない。

 結局、右利きとして不本意ながら、右ひじに注射針の先をぶらぶらさせることになった。その後、病院ですれ違う患者を見ると、ひじで解決しなかったらしく、手の甲にぶらぶらしている人も多かった。それは回避できてよかった…。
 手術の執刀医は器用なのだろうか…。

f3-8-1 右腕に注射ぶらーん


(右ひじ裏にぶらーん)