翌日も待ち時間ばかりの1日だった。前日同様、友人と通訳さんが朝から来てくれた。だが、白くない巨塔の回診が待てど暮らせど来ない。急患が出たらそちらが最優先の救急なので仕方ない。
 ようやくC医師が来た時点で昼の12時近かったと思う。

 彼の診断は同じだった。手術はなし。温存。
 「イッツ・ユー」と言われたCTの立体画像でどう骨折したか説明されたが、結局、もともと下顎というのがどういうものなのかよくわかっておらず、付け根は何がどう折れたのか今ひとつよくわからなかった。どうも関節の蝶番にあたる部分の先が、左は砕け、右は折れて倒れてしまっているということらしかった。



f5-3-1 It's You
(イッツ・ミー。左側。右側は○のあたりが完全行方不明なので内側に倒れてしまった模様。なお、このCTスキャン画像を手に入れるまでの苦労の話はまた後ほど。)



 場所的にいわゆるギプスはできない。代わりに歯列矯正と同じブラケットを上下の歯に装着し、その上下に小さい輪ゴムをはめて2-3週間固定するということだった。かみ合わせが元とまったく違うが、戻るのかと聞くと、完全に元通りにはならないとのことだった。それはショックだったが、とにかく手術もしなくて済んだし、早く退院したかった。(そのときは。)
 それよりも切実だったのが、歯が何本か欠けているということだった。歯もよく磨けないし、とても不安だ。銀歯がとれているところは特に不安だった。だが、それについては、同病院は救急治療が中心なので、自分で歯医者を見つけるようにということだった。ただ、いずれにしても口が開かないと治療できないので、まず顎を治している間にどこか予約しろということだった。
 なんと、口も開かない、歯も欠けているまま2-3週間!
 嫌だ勘弁して!!と思ったが、実際に口は1センチくらいしか開かないので、医者の言う通りだった。
 ――手にギプス。足にギプス。ギプスできないけど肋骨が息をすると激痛…。色々よくある骨折を想像してみるが、うーん、それらよりまし、か…。


 C医師は茶目っ気のある人で、急に真面目な顔になって言った。
 「そういうわけで、君がこれからしばらく食べられるものは限られている。ファースト、スープ。セカンド、スープ。」
 ――ん?
 「サーーード・・・・・・スーーープ!」
 どう反応していいのかわからず横を見ると、インド系の医師が足を組んで座って、マンガの中の優等生的にくっくっくっくと笑っていた。

f5-3-1スープ

(スープ・スープ・スープ生活のなかからましな一品を)