こうしてNHSの歯医者紹介提案が途方もなく非現実的であることを悟ったので、即、日本人向けに広告を出していたプライベート医院に電話をすることにした。日本人の受付の方が親身になって色々と相談に乗ってくださった。英国医療事情のどこに日本人が驚くかをわかっている方との会話は、本当にありがたかった。
 歯医者の件は、あとでまとめて書きたいのだが、ここで1つ重要なアドバイスをいただいた。


 プライベート医院なので、レントゲン1枚撮るのもかなりのお金を撮られることになる。その際に、NHS病院ですでに撮ったレントゲンが流用できるならばそれに越したことがないというのだ。そして、NHSの場合、治療記録はもらえると言う。
 あのアドミニストレーションで、そんなにすぐレントゲンが出してもらえるような気はしなかったが、いずれにしても治療記録や画像をもらっておくというのは、悪くないのではないかと思った。事故直後のCTなどは、日本に帰って再診を受けるときの資料になるかもしれない。たとえもう骨折はついてしまってそこからどうにもならなくとも、イギリスでの診断の特徴を理解する手助けにはなるだろう。というか、こうなったら医療情報開示体験もしてやろう。
 私は早速、データを取り寄せることができるのかを、ロイヤル・ロンドン・ホスピタルに問い合わせることにした。


 予約センターや代表番号に電話して、教えてもらった電話番号で誰も出ないとか回してもらっている途中に回線が切れるといったイギリス社会の「お約束」をまたも繰り返し、やっとインフォメーションコーディネーターの方の番号を教えてもらった。
 その日は電話はつながらず、もうクリスマス休暇に入っていたらどうしようと思いつつ翌日再びかけたらコーディネーターが無事に出た(1)。
 結局、教えてもらったメールアドレスに申請すればクリスマス明けに申請書を送るので、それを送り返し、そこから政府決済を経て、データ入手まで最短で2-3週間かかるということが判明した(2)。費用もかかるとのことだった。プライベート歯科医院の通院に間に合うようなタイムスパンではないが、2月の通院から動き始めていたら3月の帰国に間に合わなかった可能性があるので、この時点で問い合わせておいてよかったと思った。


(1)

 病院に限らず、イギリスは担当者が休みならば、その案件は動かないというのが基本です。だから、使えない人が窓口の場合は本当に悲惨。というか、かなりお仕事のできる人でも、日本の感覚からいうと休みはきちんととって、その間にたまった問い合わせはのんびりのんびり処理していくので、本当に月単位で全然返事が来ないこともけっこうあります。


(2)

 送られた申請書類を見ると、Data Protection Act 1998 Section7(2)(2016年8月25日閲覧)に基づく健康記録へのアクセス請求書というものでした。同7は、「個人データへのアクセス権」という節で、(2)項は、書面での請求がない場合は提供義務がないというものでした。電話をしているのにメールを書かされたのは、そのためのようです。
 提出したのは、1)記入済み申込用紙、2)身分証明書(パスポートのコピー)、3)居住地証明(公共料金請求書のコピー)、でした。また、支払から40日以内に情報が提供されると書いてありました。
 なお、この手続き自体は本当に順調でした。予約受付の適当っぷりと比べたとき、情報センターと経理の方は、事務方の中でも仕事が普通にできる人が配置されているのではないかと思いました。ただ、また後で書きますが、届けられたデータは色々と?なものだったのですが…。



f7-6-1 Application Form Oct 2015①f7-6-2Application Form Oct 2015②

(医療情報開示請求の申込書)