骨折の治癒具合について、レントゲンを撮って確認しないのかという質問については、「しない。それがイギリスの標準だ」とのことだった。けがの程度がわかっていて、問題なく機能しているのであれば、実際に骨がついているかどうかとか、どうついたかは見ても仕方がないという理屈はわからなくもない。日本でも、骨折のレントゲンはやたら撮るが、靭帯断裂をMRIで確認することは、それよりはるかにまれだということを考えれば、一理ある。
 ただ、日本人の多くは(帰国後見ていただいた医師も含めて)、「え?治ったかどうか確認しないの?」という反応だった。そして、イギリス人も「そうなんだ!」という人は多かった。自分がその立場にならなければどうでもいいことかもしれないが、逆に言えば、日本人は骨折したことのない人も、レントゲンで何度も確認するというイメージを持っているようなのが不思議だと改めて思った。

 さて、最大の案件、医師自身にプライベートへの転院を斡旋してもらう可能性を探るという点だが、これはプロフェッサーKにあっさり否定された。
 「NHSが設備も技術も最高で、プライベート病院が実質的によく見るというようなことはない。レントゲンは問題がなさそうな場合は通常撮らない。それが英国の標準であり、ロイヤル・ロンドン・ホスピタルで受けられるのが、英国最高の治療だ。」
 一応どう考えても大病院と思われるところのプロフェッサーがこれだけ言うのだから、もうこれはイギリスにいる以上、これ以上の診療はありえないと思わざるを得なかった。プライベートならば、お金になれば、レントゲンを撮ってほしいと言えば撮ってくれるところもありそうだと思ったが。
 こうして、プライベート医療への脱出やセカンドオピニオンの道は、公式ルートは完全に塞がれた。


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(A&Eで撮られたパノラマのレントゲン。前歯の下がちょっと斜めにわれ、両顎の付け根がくしゃっとしてます。右(写真上左)は完全に折れたのが倒れて右に倒れています。この写真がどうして手に入ったかは、またあとで。この時点での問題は、全治6週間といわれてぴったり6週目だったこの日にはてさて骨はついていたのか!?レントゲンすら撮ってもらえないが転院もできないということでありました。)